2020年のドラフト会議を直前に控え、今の心境やコロナ禍でのスカウト活動、
ドラフト会議当日に着目してほしいポイントなど、ことしならではのリアルなスカウトの声を聞くことができた。
※オンライン会議ツールZoomで開催

福岡ソフトバンクホークス スカウト

永井智浩

編成育成本部本部長兼スカウト・育成部部長

福山龍太郎

アマスカウト チーフ
出身:福岡県
主な過去の担当選手:今宮健太
経歴:東筑高~法政大~ダイエー(1998年ドラフト4位)

山本省吾

アマスカウト
出身:石川県 担当地区:東海・北陸地区
主な過去の担当選手:栗原陵矢
経歴:星稜高~慶応大~大阪近鉄(2000年ドラフト1位)~オリックス~横浜~横浜DeNA~ソフトバンク

福元淳史

出身:千葉県 担当地区:関東地区
主な過去の担当選手:大本将吾
経歴:市立船橋高~中央大~NOMOベースボールクラブ~巨人(2008年育成ドラフト4位)~ソフトバンク

スカウト座談会

ドラフト会議を1週間後に控えた今の心境は?

福山「自粛期間があったり、大会が中止になったりと、高校生・大学生の皆さんはちょっと辛い思いをしたと思いますし、我々スカウトも直接プレーを見られない環境でした。その中でもホークスのスカウトチームがまず元気でコロナにかからずに今日まで来れたことがありがたいなと思っています!選手を見られない中でも担当スカウトは必死に動いてくれたので、みんなの力で作った最終リストが結晶としてできあがりました。スカウトはみんなよく頑張ったなと。」

山本「年が明けた時にはまさかこんな年になるとは誰も想像していませんでした。なんとかプロ野球のシーズンも進行しておりますし、ドラフト会議も無事迎えられそうという状況になってきて良かったと思います。ドラフト会議特有のドキドキっていうのは、選手と同じく私たちも今感じているところです。」

福元「ドラフト会議はスカウトにとって1年の集大成でもあるので、本当にワクワクドキドキしています。私にとっても担当の選手でご縁があるのか、ないのか・・。良いご縁があればなとすごく楽しみにしています。」

コロナ禍にあっても不安というよりポジティブな期待の方が大きいということですね?

永井「コロナ禍でいつもとは違うことが多く、スカウトの活動にも制限をかけられたり、今までの業務のルーティンができなかったり、ストレスが溜まることもあったと思います。ここ最近では、ドラフト会議にスカウト全員が集まれるのかな?ということが一番心配でしたが、ホークスのスカウトチームはドラフト会議当日に全員が集まることができそう、ということでまずひとつ安心しました。また、福山スカウトからもありましたが、スカウトチームがいまコロナにかからず全員が元気でいること。これが一番です。スカウトにとって1年間の仕事の集大成がドラフト会議です。残り1週間も気を抜かず体調管理を万全にして臨みたいと思います。PCR検査も全員が受けて臨みます。」

感染対策もばっちりということですね。感染対策といえば、今年はスカウトの皆さんにとって大切な「現場に足を運ぶ」ということが難しかったのでは?

福元「3月中旬くらいから感染が拡大してきましたので、我々としても球団と共に活動をストップしておりました。丸々2ヶ月間は、高校も大学も社会人も活動していない状況でしたのでなかなか難しかったです。アマチュア関係者とも連絡を取ってはいたんですけれども、コンディションが分からないとか、選手が帰省していたりとかで…。得られる情報が少ない中でしたが、活動を再開した6月からはほぼ休みがないぐらいスカウトマンは頑張ってくれました。しかし、密を避けるために行動制限がかかって試合を見られないこともあり、なかなか判断が難しい1年になりましたね。」

外出ができない期間には、オンライン上でのスカウト活動も行っていたのでしょうか?

福山「オンラインで、っていうのはあまりないですね。野球の時間がより少なくなったことで関係者との連絡は密に取り合ったりできていたので、いつもよりコアな情報もたくさん取れた部分もあります。ドラフト会議ではアッと驚く為五郎みたいな選手を指名したいなと思ってます。(一同笑い)」

例年に比べて情報の流通度合いは少ないということでしょうか?

福山「担当者が独自の情報網を持っていますし、幅広い人間関係をそれぞれが築いているので例年に比べてマイナスというのはないですね。我々のスカウトチームは幅広い世代・幅広い人脈で対応してくれているので、若いエネルギーもあれば、老練な方々のコアな情報もございましたし、みんなで情報交換しながら活動することができました。」

移動が制限される環境の中で、北信越エリアを担当されている山本スカウトはいかがでしたか?

山本「一番は相手があってのことなので、相手ファーストで活動しました。自分たちの都合もあるんですけれど、やはり学校に行ったり企業に行ったり、また地域ごとに感染状況や温度感が違いましたので、相手のことをすごく考えて動くようにはしていました。やっぱり学校の敷地内とか企業の敷地内に入ることでご迷惑がかからないかにすごく気を遣いましたね」

スカウト間でのコミュニケーションには不安はありませんでしたか?

福元「今年はあまり感じなかったですね。グループチャットとかも使って情報共有をしていたので。今使っているこのZoom会議はすごくいいな、と思っています!こういう状況だからこそ当たり前になったところもありますが、スカウト同士でもこのZoomを利用して何回も会議をしましたし、みんなで顔を見ながら話をすることができて良かったです。」

永井本部長にお伺いします。春のセンバツ高校野球・夏の甲子園大会が中止となりました。スカウト活動への影響は大きかったのではないですか?

永井「スカウトの活動にももちろん大きな影響があったと思いますが、何より高校生にとって大きな目標、成長の場がなくなったことの方が大きいと思っています。大会を通じて伸びてくる選手っていうのは必ずいるので、そこは率直に残念であったかなと。一方でマスコミに取り上げられる場面もほぼなかったですし、他球団の評価もわかりにくいので、各球団のスカウトによって選手の評価にばらつきが出るのではないかなと予想しています。」

プロ志望高校生合同練習会の開催についてはいかがでしたか?

山本「大義としては「今年の高校生の救済」というところで、高野連とNPBが協力して開催された初めての試みでしたが、これまでのプロアマの関係性を考えるとすごく前向きな取り組みでしたし、野球界全体としては非常に開催の価値があった企画だったのかなと感じています。」

得られる情報が限られていた中で、今年の指名に向けた判断材料はどんなところでしょうか?

永井「今年はスカウティングできる期間が短かったので、各担当スカウトがしっかり見て推薦できる選手をしっかり調査していこうという大きな方針を立てて進めていました。幅広く浅く調査をする中で、「この選手は!」と思う選手を短い期間の中でもしっかりと見て調査をしようと。獲得する可能性がある選手に関しては、しっかりと調査を終えたうえで指名するというのは決めてやってきました。」

全体方針の中でも、個人的にはどんなことを意識して活動しましたか?

福元「少ない視察の中でしたが、ホークスにとってこの選手が必要か否か、自分の中で考えていつも以上に“勇気”をもって福山チーフに進言をしました。答えは誰にも分らないので、普段より一歩踏み込んでみましたし、自分の中で後悔はしないようにそこは意識して活動できたかなと思います。」

山本「私もスカウト7年目になりますけれど、これまでの経験も生かして自分の中でしっかり答えを出すと言いますか、まさに同じですけれども決断する“勇気”かなと。自粛期間中に情報を整理して、6月に入って動き出した時にはすでにどう動くかっていう行動戦略みたいなものはしっかり立てていました。6月からが勝負だと思っていましたので、しっかりと準備して動き出してからの数か月間は計画通りに動けたと思います。」

選手自身も思うように練習ができない状況で、外出自粛明けの選手たちの動きはどのように目に映りましたか?

山本「そうですね、ピッチャーなんかは1年間投げ続けていないので、逆に秋に体が元気だったりして、特にこの9月・10月に入って大学生・社会人の状態が良かったりしますので、最後まで追いかけるということも気を付けていました。高校生はなかなか急ぎ足だったので夏にベストパフォーマンスにはならなかったかもしれませんが、選手それぞれの評価を早まらず、成長のタイミングを見極めながら、最後まで追いかけることが大事と思っていましたね。」

福山スカウトは今年の活動を振り返っていかがですか?

福山「毎年、今年1年の獲得方法とかテーマを少しずつ変えて行なっている中で、私も含めみんなが成長していかないといけない。そういう中でこのコロナ禍になり、私自身も非常に決断が難しいドラフトになりました。なかなか評価を確定するのが難しかったんですけど、そこはもう私のインスピレーションで会う選手会わない選手を決めて判断材料に入れさせてもらいました。私が分からない所に関しては担当スカウトの判断を信頼して、その言葉を信じて、チームワークを大事にしていく、というとても貴重な1年になりましたね。」

続きはモバイル公式サイト会員限定です

最後にドラフト会議への思いを一言ずつお願いします!

福元「今から何をするっていうことはもうあまりないですが、当日まで引き続き調査はします。でも、どれだけシミュレーションをしても毎年本番はそのようにはいかない。悔いがないように本当に良い選手とのご縁があるのを願って、ドラフト会議を迎えたいと思います。」

山本「ホークスファンだけでなく野球ファンの方々が、優勝争い・ペナントレースの行方とともにドラフト会議に注目していると思います。どんな選手が指名されるんだろう、どんな選手がホークスに入団してくるんだろうと楽しみにしてくださっているファンの方も大勢いると思いますので、将来楽しみを持ってもらえるような選手を獲得できるように頑張りたいと思います!」

福山「今年のドラフトがうまくいったかどうかがわかるのは何年後かになると思いますけど、今年が一番特別な思いになるのかなと思いますね。我々はそのドラフトの縁だけじゃなく、ドラフト会議が終わってからがスタートだと思っています!縁があった大事な選手全員を最後までしっかりサポートして、一番いいドラフトはホークスだったと言われるように頑張っていきたいですね」

永井「ドラフトは”縁”があってのもの。この座談会の時点でもうすでに各スカウトの準備や頑張りのおかげで仕事としてはほとんど終わっている状態です。あとは他球団との兼ね合いもあるので、ホークスが絵に描いた通りに獲得ができるのかどうかっていうのは終わってみないとわからない。ただ言えるのは、どの選手も縁があって最終的に指名するので、ドラフト会議が終わった時点では全部成功だと思っています。結果は何年後かに出るわけですけど、そこで結果を出せるようにも獲得してからもスカウトは努力をし続けます。スカウトとしても今年1年は新たな発見や経験ができた1年でした。今日の座談会の中でも福元スカウトが成長したな、と感心しました!勇気を持って決断したり、慣れないことに挑戦する姿勢だったり、前向きな発言だったりがすごく見られて、ホークスのスカウトチームとしても色々な経験を経て成長を感じられました。来年にもつながる1年になりましたし、まずは今年のドラフトにスカウト一丸となって臨みたいと思います!」

有料会員限定部分のトピックス

  • スカウトの験担ぎ
  • スカウトが選ぶ「成長率No.1」
  • ドラフト会議の思い出・エピソード

インタビュアー

球団広報